はじめに 連載開始に当たって

連載第1回

この講座は後継者が地域(家電)店の事業を継承(承継)する際に必要な、継承自体に関しての見識、環境変化の中での経営・営業に関する知識、そして円滑な活動を展開するための具体的推進策等を実践的にまとめたものです。

現在、日本の中小企業の60~70%で後継者が決定していない(後継者が不在)といわれています。子息・子女自身が「オヤジとオフクロの苦労を見ているととても跡を継ぐ気になれない」「大学を卒業し就職した方が安定した生活ができる」ことを理由に継承を嫌がるケースも少なくありません。また親の現(前)経営者自身が「子供の判断に委ねる」「一代限りで構わない」と継承を強く望まず廃業への道を選ぶ地域店も少なくないのも事実です。自分の将来と進路を、そして職業をどうするのか、これは個人の問題で自由な判断(選択)に任せるより仕方ありません。同時に事業を継承してもうまくいく保証もありません。ただひとついえることはひとたび事業を継承したらお客様や社員に対しての責任が発生すること、その責任を果たすためには自分も後継者の育成が求められることになります。後継者は必ずしも子息・子女や親族に限りませんが、彼ら自身から「継ぎたい」「任せてほしい」と継承を希望する会社にすることも大切なことです。

ひとたび事業継承の道を選択したら、成功の道、成長の道を歩みたいものです。
後継者を評して「(創業者と比較すると)苦労知らずで考え方が甘い」、「困難に直面したときの忍耐力に欠けている」「創業時の苦労を知らないから逆境に弱い」「知識が先行して実行力に欠ける」等の声を聞くことがあります。
これらの指摘はほとんどが正しいのかもしれません。しかし、それは後継者の「短所」ではなく経験の欠如が原因で、若い後継者の「特徴」といえます。同時に厳しい競争の中で生き残り、勝ち残ってきた現(前)経営者に比較すること自体が酷なのが真実なのです。

事業を継承後の後継者はというと、ほとんどが現(前)経営者の身近なところで地域店経営を見てきました。その時期はすでに地域店の地位が低下に向かっていた「平成の30年の後半期」。もちろん多少の波はあったものの「良かった時代」は話を聴くだけでした。この結果、若いにも関わらず現状維持志向の後継者が多くなっているのが気がかりです。

事業経営者には給与生活者にはない苦労やリスクが伴います。苦労とリスクが不可避なら経営者しか感じることでできない喜びを仕事の中から発見したいものです。
それは規模の拡大かもしれませんし、お客様が喜ぶ姿かもしれません。あるいは高い給与、財産の蓄積でも構いません。

猪突猛進のみで成功できる時代ではありませんが、忘れないでもらいたいのは経営者のみの特権、「将来の夢」を描くことを放棄してしまっては経営者の道を選んだ価値が半減してしまうということです。

ひとりでも多くのお客様からの支持を獲得し、現(前)経営者以上の成功者になっていただきたいものです。

≪創業者と後継者の違い≫

 

次回に続く