「一を聞いて十を知る」担当者の育成

 有名なことわざ、「一を聞いて十を知る」。多くの小売店の管理・監督者が売り場担当者にこのことを求める。詳細な作業指示をしなければ実務を進めることができない担当者、そのために多くの時間と神経を使う。

 これらのことが発生する要因のひとつに店内用語の不統一あるいは無理解がある。例えば「商品回転率を高める」という会社の方針を売り場担当者に伝達するとき、商品回転率の意味と計算方法、その「高める」ための詳細な実践方法までの全てを売り場担当者に説明する、あまりにも時間がかかり、また徹底に神経を使う。この問題の事前解決策は商品回転率の意味と計算方法、そして「高める」方法を具体的に教えておく。そうすることで売り場担当者は会社の指示「商品快適率を高める」方針を売り場で実践できるのだ。

 多くの小売現場の指導を従事する中で当社のコンサルタントが管理・監督者の悩みを聴取したところ「指示を売り場担当者が実践できない」「毎回、詳細な進め方まで指示しなければならない」「その繰り返しで多くの時間を費やさなければならない」といった意見が多く出された。「売り場担当者にはキャリアや能力差がある。相手に合せての指示・指導・援助するが管理・監督者の仕事」と言ってしまえばその通りである。それでは組織改革、業績向上は進まない。

 そこで管理・監督者が指示の際に多く使う言葉(用語)を調査した。管理者・監督者から売り場担当者に分けて列記するとその数は意外に少ない。この言葉の意味と推進方法を徹底的に売り場担当者に教育をしたところ、彼らは指示の意味を理解するとともに自らの推進方法を考えるように変身した。まさに「一を聞いて十を知る」担当者育成に成功したのだ。

 言葉(用語)の種類は業種・業態、店舗規模などにより異なる。「指示を売り場担当者が実践できない」と悩む前に実践できるようにする教育に時間を割く、「急がば回れ」である。